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債権者の税金対策 B形式上の貸倒れ



2011/10/1  菊 池 芳 平 


はじめに
 営業上の債権が法律上消滅していない場合や、実質的に回収不能とはいえない場合でもその債権を不良債権として経費計上できる方法がないのでしょうか? 今回はこの点について検討します。

 債務者との取引から1年以上経過した場合や、同一地域の債務者の債権総額がその取り立て費用に満たない場合に、当該債権を一定の方法で貸倒れとして損金経理したときはその方法が認められることになっています。

 その要件を示した通達が以下の9−6−3です。

 9-6-3 一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ
債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下9-6-3において同じ。)について法人が当該売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認める。

(1) 債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)
(2) 法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき
(注) (1)の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したためその後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、この取扱いの適用はない。

 
貸倒れの対象債権は
 通達9−6−3による貸倒れの対象債権は、継続的取引の売掛債権が対象ですから、金銭消費貸借契約による貸付金その他これに準ずる債権は含まれないことに注意が必要です。したがって不良貸付金についての損金計上は、通達9−6−2あるいは個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の計上基準で判断することとなります。

 (1)の債務者の取引停止については注記に記載があるように、継続的な取引が前提です。
 したがって不動産取引のようにたまたま取引を行った場合の売掛債権については適用がないこととなっています。

 (2)の場合の取立て費用と売掛債権の総額の比較は、取引先ごとではなく、同一地域ごとに債務者の合計額で判断します。

備忘価額について
 この通達を適用する場合は、当該売掛債権が法律的に消滅あるいは事実上実質的な貸倒れとなるまでの間は、備忘価額を付さなければならないことになっています。

その他の注意点 
 したがって、会計処理上も備忘価額の総勘定元帳や補助簿への記載が必要です。
 同時にその債務者の住所、名称、当該売掛債権の金額、損金経理のてん末とその後の回収状況の記録も税務対策上必要になると思われます。

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